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2007年 07月 19日
当社では定年年齢を65歳としています。人員調整等の事情から、これを法定の60歳まで引き下げたいと考えていますが、「従来保障していた65歳までの勤務を5年分短縮するものであり、不利益変更に当たるのではないか」との声も出ています。法的に問題はあるでしょうか。(富山県 A社) 定年年齢の引き下げは労働条件の不利益変更に当たり 高年齢者雇用安定法4条の2の趣旨に反する [回答者] 山本圭子(やまもとけいこ 法政大学講師) 1.高年齢者雇用安定法と定年年齢 高年齢者雇用安定法4条本文は、平成10年4月1日以降、定年年齢の下限を60歳以上とすることを義務化しています。ご質問にある「法定の60歳」の定年年齢とは、この4条を指すのでしょう。また、高年齢者雇用安定法4条の2では、「定年の定めをしている事業主は、当該定年の引上げ、継続雇用制度の導入又は改善その他の当該高年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならない」としており、現状の御社の65歳定年制は、この4条の2の規定にかなったものといえましょう。 近年、定年制と60歳を超えての雇用継続等を争う例も増えています(定年後の雇用延長の慣行の適否が争われた、日本大学事件(東京地裁平14.12.25判決(第3576号03.3.7参照)など)。ところで、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げに伴い、60歳台前半の雇用をいかに確保するかが、大きな課題となってきています。これについては、厚生労働省「今後の高齢者雇用対策に関する研究会」が、段階的な定年年齢の引き上げや希望者全員を対象とする再雇用制度の導入などによる65歳までの雇用の確保を法律で義務付ける方向を示した報告書を取りまとめており、厚生労働省は高齢者雇用の具体的な見直しをさらに検討することとしています。 このたびの御社の65歳から60歳への定年年齢の引き下げは、こういった高齢者雇用をめぐる動向に逆行するものであって、また、従前65歳までの雇用を確保してきたのを5年短縮するのは労働条件の不利益変更に当たるといえます。 2.労働条件の不利益変更の判断基準 新たな就業規則の作成または変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないと解されています。しかし、労働条件の集合的な処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建て前とする就業規則の性質からいって、当該就業規則が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない、ということは、秋北バス事件判決(最高裁大法廷昭43.12.25判決民集22巻13号)が示すところです。 その合理性の判断は、当該就業規則の作成または変更がその「必要性」および「内容」の両面からみて、それにより労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの「合理性」を有することを要する、とされています。 また、その後の判例法理の蓄積によって、就業規則作成・変更の合理性の有無は、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況、経過措置の有無とその内容等を総合考慮して判断する、との判断基準が確立しています。 3.定年年齢の引き下げの適否 さて、御社では、前述の高年齢者雇用安定法が定める定年年齢の下限の60歳まで定年年齢を引き下げることをご検討のようですが、定年年齢の引き下げについては、大阪府精神薄弱者コロニー事業団事件(大阪地裁堺支部平7. 7.12判決)が参考となるでしょう。これは、定年年齢の63歳から60歳への引き下げ、58歳以降の昇給停止を定める就業規則の効力が争われた事案です。判決は、これらの労働条件の変更は「労働者にとって重要な労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更であることが明らかである」としたうえで、上記の判例法理にのっとって、「定年引下げによる60歳定年制は、時代の流れにそぐわないとの疑念がぬぐいきれない」とし、その変更の必要性および変更内容も、高度の必要性がないのに、かなりの不利益をもたらすものであって、その必要性および内容の両面からみて、法的規範性を是認できるだけの合理性を有するとはいえないとし、改正就業規則を無効と判断しました。 また、企業の吸収合併や経営状況の悪化等を背景に、労働協約によって定年年齢の引き下げや退職金の算定方法を不利益に変更した例として朝日火災海上保険(石堂・本訴)事件(最高裁三小平9. 3.27判決)があります。組合と協約を交わして、定年年齢を63歳から57歳に引き下げ、満60歳までは特別社員として再雇用することを定めた事案でした。判決は、従業員の被る不利益は決して小さいものではないが、協約締結に至った経緯、経営状況、協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、その規範的効力を否定すべき理由はないとして、変更の効力を認めています。 御社の場合、定年年齢の引き下げを就業規則の変更によって実施しようとしているのか、労働協約によって実施しようとしているのか定かではありませんが、いずれにせよ、定年年齢の引き下げにつき「高度の必要性」の存否と、代償措置、経過措置の有無がポイントとなるでしょう。ご質問では「人員調整等の事情から」とその理由を述べておられますが、高齢者雇用をめぐる上記のような潮流に逆行するほどの必要性が存するのかという点が問われます。定年年齢の引き下げは、従業員の老後のライフプランに多大な影響を与えることを考慮すれば、一方的な定年年齢の引き下げは再考なさることをお勧めします。
by elmomle
| 2007-07-19 18:22
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